本記事は、相模原市内で開業されている先生方のうち、まだ獣医師会に加入されていない先生に向けてまとめています。狂犬病予防注射は「打って終わり」ではなく、飼い主さんへの説明や行政手続きの案内まで含めて、動物病院にとって欠かせない業務です。
ここでは、相模原市での狂犬病予防注射の流れや「登録取扱動物病院」制度の仕組み、そして当会が実施した会員アンケートから見えてきたメリットをご紹介します。
① 一般的な狂犬病予防注射の流れ
- 犬の登録(生涯に一度)
- 年1回の狂犬病予防注射

飼い主が自治体で飼い犬を登録すると、発生時の対応が迅速に行える体制が整います。また、生後91日以上の犬には、動物病院や集合注射会場で予防接種を受けさせることが義務付けられています。
病院で接種した場合は「狂犬病注射済証明書」を発行し、飼い主が市役所に申請して「狂犬病予防注射済票」を受け取ります。自治体と連携している病院では、その場で済票を交付できる場合もあります。
こうした流れを飼い主に分かりやすく案内するのも、動物病院の大切な役割です。
② 相模原市での手続きの特徴
相模原市では、各区ごとに注射済票の申請窓口が設置されています。所在地や担当課は市のホームページでも公開されており、飼い主から質問があった際に案内できるよう把握しておくと安心です。
また、近年はマイクロチップ義務化に伴い、チップ装着犬については犬の登録手続きが不要になる特例制度も始まっています。ただし、狂犬病予防注射に関する手続きは引き続き必要ですので、その点は飼い主にしっかり伝えていく必要があります。
③ 「登録取扱動物病院」制度とは?
相模原市では、飼い主の二度手間を解消するために「登録取扱動物病院」制度を導入しています。この制度により、獣医師会に加入して市と委託契約を結んだ病院は、院内で注射済票をそのまま交付できるようになります。
これにより、飼い主は「病院での接種」と「注射済票の受け取り」を同時に済ませられるため、利便性が大きく向上します。
④ 【実態調査】市内動物病院はどう対応しているか?

相模原市獣医師会が会員を対象に実施したアンケート調査(回答23院)では、全ての病院が「院内で注射済票を交付している」と回答しました。
自由記述の中では、次のような声が多く寄せられています。
- その場で渡せるのは飼い主さん・病院双方にありがたい
- 飼い主の手間が省けることでサービス向上になる
- 役所に行かずに済むことで接種率が上がる
- 郵送対応が不要で効率的
いずれの回答も、飼い主の満足度と病院の効率性を同時に高めていることを実感させる内容でした。僕自身も「登録取扱動物病院」として運用してみて、この制度の便利さを日々感じています。
⑤ まとめ|スムーズな手続きと飼い主満足のために
狂犬病予防注射は法律で定められた飼い主の義務ですが、実際の現場では「病院で完結できるかどうか」が飼い主の安心感を左右します。
相模原市では、登録取扱動物病院として獣医師会に加入すれば、注射済票を院内で交付できるため、飼い主にとっても病院にとっても大きなメリットがあります。加えて、行政との情報共有や学術セミナーへの参加、開業初期のサポートなど、獣医師会に加入する意義は多岐にわたります。
まだ加入されていない先生へ。狂犬病事業はもちろん、地域の獣医療全体を支える仕組みにぜひご参加いただければと思います。
※本記事中では便宜上「相模原市獣医師会」と記載していますが、実際には「公益社団法人 神奈川県獣医師会 相模原支部」として狂犬病事業を担っています。